マインドマップ Day 9
みなさん、こんにちは。キネマ翻訳倶楽部SCHOOL広報担当で字幕翻訳家の山名です!

さて今回は、「辞書の上手な使い方①~単語の調べ方~」をテーマに記事を書いていきたいと思います。

知らない単語が出てきた時、みなさんも通常辞書を引き、その単語の意味を調べますよね。字幕翻訳でもそれは同じなのですが、実は、辞書を上手に使うことで、誤訳を減らすことができるんです。まず、先に以下の点をお伝えしておきますね。

1.知っている単語ほど辞書を引く⇒知っている単語ほど誤訳をしやすい

2.大きな辞書を使う

知っている単語ほど辞書を引く、とはどういうことかと申しますと、ドラマなどで話される会話は、脚本家が練って作り上げたセリフ。なので日常会話の感覚で訳してしまうと、違った意味になってしまう場合があります。なので、少しでも分からないと思う部分があれば、必ず辞書を引くことが大切です。

では、どうやって辞書を使うか、ということなのですが、一番のオススメは英英辞典ですが、英日辞典でも大きな辞書を使うことが大事です。なぜなら、ポケット辞書のような小さい辞書には単語の意味しか載っていないからです。大切なのは、その単語が「どういう状況で使われるか」なのです。単語というのは、使われる状況で意味が決まります

例えば、”like”を例にとってみましょう。likeの意味はどうやって特定するでしょうか?まずは品詞で判断しますね。これは動詞なのか、前置詞なのか?しかし、品詞だけでは意味が特定できない場合もあります。例えば、observeという単語。この単語には主に、「注意深く観察する、述べる、守る」の意味があります。どれも動詞ですね。このように、品詞は同じだけど、意味がいくつかある単語の意味を特定するには、文脈から判断するといい、とよく言われますが、それでも誤訳をする可能性があるのでオススメできません。ではどうすればよいか?それは…英英辞典を使う!です。私のオススメはCollinsという英英辞典。無料で使える上に、「〇〇な状況の場合はXXの意味になる」という風に意味が解説されているのです。

実際に”observe”を引いてみると、このように書いてあります。(一部引用)

If you observe a person or thing, you watch them carefully, especially in order to learn something about them.

この、If…の部分が重要です!ここに、「どういう状況のときにこの言葉を使うか」が書かれているからです。

とはいえ、英英辞典は説明がすべて英語なので、ちょっと大変かな?と思う方もいると思います。説明文の中にさらに分からない単語が出てくるこどもありますから。。。でも、手間を惜しまずにその新たに出てきた分からない単語も調べていくと、誤訳を減らしていくことができます。なので、ぜひとも面倒かもしれませんが、少しでも分からないと思う単語が出てきたら、その単語も調べてください。

そして英英辞典の他に、大きい辞書を使うことも大事なのですが、私のオススメはgoo辞書という辞書です。こちらも無料で使えて、言葉の使い方の解説も詳しく書いてあります。ただ、goo辞書は中辞典なので、やはり理想は大辞典を使うことです。

では、goo辞典で”observe”を引いてみると、どう書いてあるでしょうか。(一部引用)

<他>…を注意してよく見る,〈…ということを〉観察する,観測する≪wh節≫;自注意する,気をつける,観察する
<他((形式))>…を注視して気づく,〈現象・状況などを〉認める,目にする,〈…ということに〉気づく≪that節≫;
〔observe A do [doing]〕A(人)が…するのを見守る;…が(…であるのを)認める
<他((形式))>〈…ということを〉(気づいて)述べる≪that節≫;自(…への)所見を述べる,論評する≪on≫
<他〈法律などを〉> 守る,遵守する;〈状態などを〉保持する

このように、他動詞1つとっても、wh節の時はこういう意味、that節の時はこう、という風に状況が細かく書かれていて便利です。

洋書や英語の雑誌・新聞記事などをよく読む方は、知らない単語が出てきても前後の文脈から「たぶんこういう意味だろう」と推測しながら読むことが少なからずあると思います。でも、字幕翻訳の場合、特にドラマや映画の場合は、脚本家が1つ1つセリフを考え、練ったセリフなので、知っている単語であっても前後の文脈から推測して訳してしまうのはキケンです。ブログの冒頭でも同じようなことを述べているので重複してしまいますが・・・。

今字幕翻訳を学んでいる方もこれから学びたいと思っている方もすでに字幕翻訳者として活躍されている方も、ぜひ辞書の上手な使い方を意識していただきつつ、誤訳のない翻訳者を目指していただけたらと思います。

こちらのYouTube動画でさらに詳しい内容をお話ししています。ぜひご覧ください!

https://www.youtube.com/watch?v=J4VroA2fDO0&t=5s