みなさん、こんにちは。キネマ翻訳倶楽部SCHOOL広報担当で字幕翻訳家の山名です!
さて今回は、「字数制限を言い訳にしない」をテーマに記事を書いていきたいと思います。
以前にもお話ししましたが、字幕には「字数制限」というものがあります。視聴者に映像に字幕がのった状態で映像を見て、内容を理解してもらいたいので、1秒あたり4文字(1秒間で人が読み切れる字数)という字数制限があるわけです。
そして字幕とは、脚本家の意図を視聴者に伝えるものです。作品の中のセリフは、脚本家が頭をひねって考えたものになるので、字幕翻訳者はその意図を視聴者に伝えなければなりません。つまり字幕は、脚本家と視聴者のためのもの、脚本家の意図を視聴者に伝える橋渡し的な役割を担います。
そこで脚本家について考えていただきたいのですが、脚本家はどのように作品の魅力を最大限に視聴者へ届けられるかを考えてセリフを練っています。ですので、脚本家にとっては、字幕翻訳者が翻訳する際の字数制限のことなど知るわけもないのです。字幕翻訳家の仕事は、限られた字数の中で、しっかりと脚本家のセリフの意図を伝えることです。では視聴者どうでしょうか?視聴者は字数のことをご存じだと思いますか?視聴者は、ただその作品の魅力を知りたい、楽しみたい、と思っているので、視聴者にとっても字数のことなど知るわけもないのです。
字幕翻訳者が字数制限を意識するあまり、字数を1~2文字減らすことによって、視聴者がセリフの言い回しが分かりづらい、読みづらい、と感じてしまったら、いくら制限内に字数が収まっていたとしても、そのセリフの意味を理解するのに時間がかかってしまいます。そうなるぐらいなら、多少オーバーしても分かりやすい言い回し、読みやすい字幕にしたほうがいいのです。視聴者が読みづらい字幕を読むのに時間をかけるのと、多少文字オーバーしていても読みやすい字幕を読むのとでは、結局かかる時間は同じ、場合によっては読みやすい字幕のほうがサラっと余裕で読めて早く読めるかもしれません。
気を付けなければいけないことは、分かりやすい字幕を考えるあまり、セリフの意図からかけ離れてしまうということがしばしばあります。字数制限があり、そのセリフを分かりやすくコンパクトにまとめるために言い替える必要があるのですが、言い換えたときに実際のセリフの意味や意図から離れていってしまうのです。セリフをどこまで言い換えるか、情報の取捨選択、そのあたりのバランスが難しいのです。なので、セリフの原文に忠実に、原文に近い言葉や表現を探し、日本語に訳出していくという作業が大事になってきます。そうすることで、脚本家の意図を伝えることができるのです。
字数制限があるからと、この情報をカットしました、とか、このように意訳しました、というふうに言い訳をするのではなく、「流れがよくわかりやすい字幕で視聴者に届けること」「脚本家の1つ1つのセリフの意図をしっかり視聴者に届けること」がとても大事なことなのです。
こちらのYouTube動画でさらに詳しい内容をお話ししています。ぜひご覧ください!
https://www.youtube.com/watch?v=fVPoFemWynA